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2008年5月17日 (土)

ふたたび多喜二の「蟹工船」人気にふれて

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 当ブログ2月17日付けで、プロレタリア作家で日本共産党員だった小林多喜二の代表作「蟹工船」が、いま若者の間で広がっていることを紹介した。その後も春になって異例の売れ行きが始まっているそうだ。すべての全国紙が報じるし、テレビもワイドショウなどで取り上げている。この小説が世に発表されたのは1929年(昭和4年)である。多喜二が特高に逮捕され虐殺される4年前の26歳ころの小説だ。今から79年も前の作品がクローズアップされるとは全くの驚きである。読売新聞5月2日付け夕刊によれば、「文庫は1953年に初版が刊行され、今年に入って110万部を突破。大手書店では<現代の『ワーキングプア』にも重なる過酷な労働環境を描いた名作が平成の『格差社会』に大復活!!>などとPRし、店頭に平積みされている」と現代の人気振りを紹介している。「平積み」とは書店に行けばわかるように、背表紙だけを見せる縦並びではなく表紙が見えるように横に寝かせているコーナーという意味だ。5月16日の「しんぶん赤旗」によれば、「新潮社は新潮文庫『蟹工船・党生活者』を3月から合計5万7千部増刷しました」と紹介。「年間2500部だったものが、この数ヶ月は100倍のペースで売れている」と、新潮文庫編集部の「談」まで紹介している。「ワーキングプアの現実に対して、怒りを増幅させてくれたり、勇気を与えてくれる本を求めていたのではないか」とも言う。正直言って昭和初期の作品だし表現上も現代的ではない難解なところもある小説が、「新潮社によると、購読層は10代後半から40代後半までが8割近く。同文庫編集部は『一時期は消えていった作品なのに』と驚きつつ、『ここまで売れるのは、今の若い人たちに新しいものとして受け入れられているのでは』と話している」(先述の「読売」夕刊)というほどに若い世代に読まれているのがまた驚きである。TBSの「朝ズバッ!」も取り上げ、みのもんた氏が「プロレタリア文学の代表作です。いまの日本の状態を見ていると若者たちが憤慨するのは当たり前だと思う」とコメントした。読売新聞以外でも「蟹工船 はまる若者」(朝日13日付け)「突然のブーム ワーキングプアの“連帯感”」(産経14日付け)と取り上げている。現在、多くの大企業でも派遣だの偽装請負など非正規社員として、まるで道具の使い捨てのように働かされる若者たちが、蟹工船に出てくる北洋漁業における過酷な労働にたいし、ついに立ち上がった労働者の心意気と相通じるものがあって読まれているのだろう。それにしても、これだけ社会が近代的に発展しても、飽くなき富を追及する企業の収奪の論理と、それを推進する上部構造としての政治によって昭和以前のドレイ的収奪が今も繰り返されているのはなんとも情けない日本ではないか。今年も各地で行われた「多喜二の文学を語るつどい」で行われた「蟹工船エッセーコンテスト」で特別奨励賞を受けた20歳青年の文章の一部を「読売」夕刊から紹介しておこう。「現代の日本では蟹工船の労働者が死んでいった数以上の人々が(中略)生活難に追い込まれている」「蟹工船を読め。それは、現代だ」と書いている。

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