温室ガス削減中期目標を「05年比」とした姑息な理由は…
世の中、まさに「エコ、エコ」ラッシュである。テレビCMでも新聞広告でも「エコ」と付ければモノが売れるかのようによく目に付く。そして政府も補正予算で国民に「エコカーに買い換えろ」とか、地デジ対応のテレビをはじめとする省エネ家電を買えとうるさい。税金でポイントまで付けてくれるとか大サービス?なのである。まるで温室効果ガス削減はすべて国民の責任であるかのようだ。そして、麻生首相は6月10日、胸をはって温室効果ガス排出量削減の中期目標を示したのである。2020年までの中期目標として「05年比15%削減」とした。これで「ヨーロッパの13%減や、アメリカ・オバマ政権の14%減といった欧米の中期目標を上回る」(6月10日の麻生首相発言)と自慢げだった。ところでこの「05年比」という文言だが「えっ!?なにかおかしくない?」…咄嗟にそう思った。これまでは温室効果ガス削減の目標を言う場合は1990年を指す「90年比」というのが常識と思っていたから調べた。1997年12月11日、気候変動に関する国際連合枠組についての京都議定書というのがある。京都で開かれたから「京都議定書」と俗に言う。ここで加盟国が合意したのは2008年から12年までの各国の削減量の目標を決め、「90年比5%削減」とした。ちなみに日本は6%減であった。国連の気候変動枠組み条約でも、第4条で、先進国が「温室効果ガスの人為的な排出の量を1990年の水準に戻す」ことをめざすと規定している。だから国際的に通用する基準年は「90年比」しかない。なぜ麻生首相は「05年比」と言い出したのか?現在の日本は京都議定書で決めた90年比6%削減どころか逆に増やしているのだ。だから恥ずかしいこともあるだろうし、何よりも“90年を基準にするのは欧州連合(EU)に有利で日本に不利だ”という財界の意向を汲んで「05年比」で見せかけの数字を大きくして「欧米の目標を上回る」などと、「数遊び」でごまかそうというわけだ。見せかけだけで数値が大きく見えても、削減量そのものが小さいのでは何の役にも立たない。中期目標の「05年比15%」は京都議定書の6%にわずか2ポイント上積みに過ぎず90年比で換算して8%である。温室効果ガスを90年から排出量を減らし続けているEUと、増やしている日本を比べると、基準年を現時点に近づければ、日本の場合、2020年の総排出量は同じでも見かけ上の削減目標数値は大きくなるからだ。これでは国際的に通用しないし、アメリカが「05年比」としたから同調しただけだろう。しかし、京都議定書当時加盟していたEU15カ国で見れば「20年までに20%削減」の中期目標は05年比では18%に当たり、アメリカも6月26日の下院で可決された法案では「05年比17%」であり、日本の15%減では先進国として最低水準である。これは産業界などの要求に従ったものである。エコカーや省エネ家電を国民に買えというけれど、日本の温室効果ガスの排出量は家庭部門で4.8%、マイカー含む運輸関連の自動車や船などで18.5%で、もっとも多いのは発電所や工場などの産業界で63.5%を占める。排出量の多いその産業界での削減の具体策は麻生首相の口からは出なかった。財界にモノ言えない自公政権の姿がある。にもかかわらず「エコ、エコ」と言って車や電化製品を国民に売りつける考えのようだ。電力会社などの超大口排出施設を抱える産業・企業が、削減目標をかかげた国との公的協定を義務づけるなどしないかぎり、「05年比15%削減」目標さえも空しくなる。むろん、家庭やマイカーのエコ化も大事だが大口排出源での規制こそ最も重要である。アメリカの映画「ロジャー&ミー」で自動車大手のGMの人員削減が地域社会に与えた悪影響を批判したマイケル・ムーア監督は、GMが経営破たんしたことを歓迎し、燃費効率の悪い米大手自動車3社の車を、地球温暖化の「大量破壊兵器」とこき下ろしたというが、人類の生存にとって重大な問題となっている温室効果ガス削減は産業界と国民が力を合わせた取り組みこそ必要なのである。
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